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9月20日 発表分

中道 蘭 慶應義塾大学 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科 

 DNA損傷ポドサイトとCD8+T細胞のクロストークは腎障害進行に重要な役割を果たす

DNA 損傷ポドサイトと CD8+ T 細胞のクロストークは腎障害進行に重要な役割を果たす

中道 蘭

慶應義塾大学内科学教室腎臓内分泌代謝科

背景:我々はポドサイト DNA 損傷修復応答の DNA メチル化変化を介した慢性腎臓病病態への関与を報告した(Cell Rep 2019). 近年 EWAS 研究で血球細胞 DNA メチル化変化と腎機能との関連が示唆されているが,その機序は不明だ.そこでポドサイト DNA 損傷と血球細胞の DNA メチル変化との関連に着目した.
方法:ポドサイト特異的に DNA 切断酵 I-PpoI を発現したマウス(以下 I-PpoI マウス)を作製した.
結果:I-PpoI マウスはポドサイトに二本鎖 DNA 切断(DSB)部位増加を認め, ポドサイト足突起の癒合,ポドサイト足突起の癒合,アルブミン尿を呈し,24 週齢で急速な糸球体硬化,間質線維化を伴い腎不全で死亡した.単離ポドサイトでは DNA のメチル化が亢進しており,RNAseq 解析で自然免疫経路の活性化を認め,その機序に細胞質 dsDNA の蓄積による cGAS-STING pathway の活性化の関与が示唆された.更に single cell RNAseq 解析の結果, I-PpoI マウスの腎皮質では CD8 + T 細胞(CD8)を含む免疫細胞の拡大を認め,CD8 は活性化補助刺激受容体 NKG2D を発現し,メモリー前駆型エフェクター細胞パターンを呈し,ポドサイトDNA 損傷が CD8 の活性化,長期生存するメモリー細胞への分化を含む腎臓免疫微小環境変容を介し,持続的炎症を惹起する可能性が示唆された. I-PpoI マウスのポドサイトおよび様々な腎臓病のヒト糸球体において NKG2D リガンド発現上昇を認め,更に I-PpoI マウスへの NKG2D 抗体投与はアルブミン尿増悪抑制,糸球体硬化と尿細管間質線維化の減弱効果を呈し,NKG2D/NKG2D リガンド相互作用の DNA 損傷ポドサイトに起因する腎障害増悪への寄与が示唆された.次に I-PpoI マウスの血球細胞の DNA メチル化解析の結果,CD8 の分化に関わる STAT1/STAT2 の結合部位のメチル化亢進を認め, STAT1 KO マウスの表現型と同様に I-PpoI マウスの末梢血で CD44 high メモリーCD8 の増加を認めた. I-PpoI マウス骨髄の野生型への移植でアルブミン尿増加,野生型骨髄の I-PpoI マウスへの移植で腎線維化抑制,腎機能改善を認め, DNA メチル化変化を介し末梢循環に出現したメモリーCD8 は病原性を有し骨髄で維持されている可能性が示唆された.
結論:ポドサイトの DNA 損傷は,血球細胞の DNA メチル化変化を介し,腎臓免疫微小環境の持続的変化とともに腎臓,末梢循環,骨髄と全身性のCD8分画変化を惹起し,腎障害に寄与する可能性が示唆された.これらは,様々な慢性腎臓病においてポドサイト DNA 損傷に続発する糸球体硬化と腎線維化の進行並びに心血管合併症に対する新たな治療標的になる可能性が示唆された.

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